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日本

2024年の出来事

1966年の一家4人殺害事件の再審無罪判決後、袴田巌さん(右から2人目)と姉の秀子さん(右)に頭を下げる静岡地検検事正、2024年11月27日、浜松市。

© 2024 The Asahi Shimbun via Getty Images

日本は力強い市民社会を有する自由民主主義国家である。10月に自由民主党の石破茂氏が新首相に選出された。11月の衆議院総選挙では自民党と公明党からなる連立与党の獲得議席数が過半数を割りこんだ。これは2009年以来の出来事だった。

日本には人種、民族、宗教に基づく差別、性的指向や性自認(SOGI)に基づく差別、年齢に基づく差別を禁止する法律がない。また、国内人権機関も存在しない。

死刑

死刑囚については、弁護士との接見の制限、死刑執行の告知が当日にならないと行われないといった問題がかねてより指摘されている。本稿執筆時点で2024年に死刑執行は行われていない。また、2024年10月時点で107人が死刑囚として収監されている。9月には、1966年に一家4人殺害事件で逮捕され、その後に死刑判決が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(88)に対し、静岡地方裁判所は再審無罪を言い渡した。袴田さんの再審は2023年に開始されたが、最初の再審請求の申立てから40年以上が経過していた。袴田さんは第二次世界大戦後に再審無罪となった5人目の確定死刑囚である。 

刑事司法制度

刑事司法制度では、被疑者に対し、長期の身体拘束をした上で弁護士の立ち会いなしに脅迫・誤導などの取り調べで自白を迫っていると、長年批判されてきた。改革を求める動きの一環で、複数の前向きな判決が言い渡された。東京地方裁判所は7月、黙秘した後も続いた取り調べの中で、検察官が被告人の人格権を侵害する侮辱的な発言を一方的に繰り返すなどしたことは違法な取り調べだったとして、国に賠償を命じる判決を言い渡した。大阪高等裁判所は8月、取調べでの言動を理由に検察官を特別公務員暴行陵虐罪で審判に付する初めての決定をした。

刑務所の状況

女性受刑者は、日本政府による不十分な改革、薬物の単純所持・使用の犯罪化、そして代替刑が十分に整備されていないことなどから、拘禁下での深刻な人権侵害にたびたびさらされている。日本政府は今年2月、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書を受けて、女性受刑者の出産時に分娩室内での拘束具使用を事実上禁止する2014年の通知について、2014年から2022年にかけて刑務官がこの通知に違反していた事例が6件あったことを認めた。法務省は3月、国際基準に沿ってこの通知の対象を拡大した。

女性の権利

世界経済フォーラムによると、日本は先進7ヵ国(G7)のうちジェンダー平等ランキングで最下位だ。政治及び経済分野での女性のエンパワーメントとレプリゼンテーションが不十分なことが主な理由だ。女性の権利活動家たちは改革を訴え続けており、例えば、現行の夫婦同姓を義務付ける制度の改正に向けた取り組みは勢いを増している。現行法では、婚姻した夫婦の約95%が夫の姓を名乗っている。背景の一つには社会規範や男女間の社会経済格差があると指摘される。

性的指向と性自認(SOGI)

2023年の画期的な最高裁判所決定にもかかわらず、国会は人権侵害をもたらしてきた性同一性障害特例法の改正を行わなかった。他方で、結婚の平等をめぐって明るい判決が複数言い渡された。。3月には、札幌高等裁判所が同性婚禁止は違憲との判断を示し、10月には東京高等裁判所が、12月には福岡高等裁判所が同様の判断を示した。この3件の高裁判決は、各地の裁判所に婚姻の平等を求めて起こされた6件の訴訟のうちの3件だ。最高裁第3小法廷は3月、同性パートナーも遺族として犯罪被害者遺族給付金の受給対象となるという初めての判断を示した

庇護希望者と難民

出入国在留管理庁は依然として難民の認定をしない傾向が強い。2023年には、13,823人が難民認定を申請したが、認定されたのは303人だった。またミャンマーからの920人を含む1,005人が「人道的な配慮」を理由に在留を認められた。2023年の難民認定申請件数は2022年と比べて266%増加した。

6月には改正出入国管理及び難民認定法(改正入管法)が施行された。この改正法により、日本政府は難民認定申請が3回目以降の庇護希望者を強制送還することが可能になった。

移民労働者の権利

国内の生産年齢人口が急速に減少する中、日本政府は数十年にわたり外国人技能実習制度などによって移住労働者を確保してきた。この制度は、原則として3年間は就労先を変更できないことなどから起こる人権侵害の「温床」と長年批判されてきた。

6月、国会で改正入管法などが成立した。外国人技能実習制度に代わり、外国人労働者を対象とした新たな人材の育成と確保の制度である「育成就労制度」が創設された。1年以上の一定期間働けば、技能および日本語能力などがあれば就労先の変更(転籍)が認められるとされているが、その条件が依然として不明確だとの批判もある。

レイシャル・プロファイリング

民族的マイノリティの3名が1月、警察から外見を理由に職務質問を繰り返し受けたと訴え、国や東京都などを相手取り訴訟を起こした。

外国籍の子どもの教育権

国際法では、すべての子どもに対する初等教育を義務化することが求められており、教育を受ける権利の実現にあたり国籍や言語に基づく差別は許されない。しかし、教育基本法の義務教育の規定は日本国籍の子どもだけに適用され、外国籍の子どもはその対象から外されている。文部科学省によると、学齢相当の外国籍の子ども約8,600人(同年齢の子ども全体の約6%)に不就学の可能性がある。同省は日本語指導を必要とする子どもが過去最多の約7万人に上るとも報告している。

障がい者の権利

最高裁判所は7月、旧優生保護法について違憲との判断を示し、国に対し、同法により不妊手術を強制された人たちに賠償を命じた。およそ8万4000人が不妊手術と人工妊娠中絶の対象となった。遺伝性疾患を理由とした手術が最も多く、1948年から1996年の間に不妊手術を受けた人はおよそ2万5000人に上るとされている。